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総合原価計算における仕損と減損

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簿記(TOP)>工業簿記2級>総合原価計算における仕損と減損

総合原価計算における仕損と減損についてお伝えします。

総合原価計算における仕損と減損

仕損

製品の製造中になんらかの原因で加工に失敗することがあります。
失敗してしまうと、製品としては不合格となってしまう(その製品の基準を満たせない)ので、通常の製品と同じに売ることはできません。
このような不合格品の発生を仕損といいます
また、仕損の発生による損失のことを仕損費といいます

個別原価計算でも仕損が出てきましたが、仕損そのものの意味は個別原価計算での仕損と同じです。
違うのは処理方法になります。

減損

製品を製造するときに材料などを投入しますが、製品を加工するときにこれらの材料が蒸発したり流れていったりすることで減ってしまうことがあります。
このように材料が減ってしまうことを減損といいます
また、減損の発生による損失のことを減損費といいます

仕損と減損の違い

仕損は、通常の製品と同じには売ることができないとはいえ、形がきちんとあります
そのため、材料として再利用したり、手直しをして規格外品として通常より安く売ったりすることもできます。

それに対して減損は形がありません
そのため、材料として再利用することも手直しをして規格外品として通常より安く売ることもできません。

これが仕損と減損の違いになります。

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総合原価計算における仕損と減損の処理

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >総合原価計算における仕損と減損の処理

総合原価計算における仕損と減損 の処理についてお伝えします。

仕損と減損の処理

仕損や減損が発生した場合、原価計算上どのように処理するのかは、その仕損や減損が正常なものか異常なものかによります。

正常な発生額の処理

製造を行うと必ずといっていいほど発生し、避けることができない仕損や減損のことを正常仕損・正常減損といいます
これらは通常発生する費用なので原価に算入します。
よって、正常仕損や正常減損は完成品や月末仕掛品に負担させることになります。

異常な発生額の処理

通常発生する程度を超えて大量に発生する仕損や減損を異常仕損・異常減損といいます
これらは異常なものなので原価には算入しません。
非原価項目として処理します

ちなみに、簿記2級では正常仕損や正常減損しか出題されないので、これからは正常仕損や正常減損に絞ってお伝えしていきます。

仕損と減損の処理方法の違い

仕損品に利用価値がある場合のみ計算が若干異なります(減損には価値がありません)が、それ以外は仕損も減損も、原価計算における処理方法は同じです。
本質的には仕損も減損も同じなので、同じように考えてかまいません。

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通常発生する仕損や減損とは…

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >通常発生する仕損や減損とは…

通常発生する仕損や減損についてお伝えします。

通常発生する仕損や減損とは…

正常仕損や正常減損とは通常発生する仕損や減損です。
しかし、通常発生する仕損や減損とは何でしょうか。

仕損や減損というのは一言で言ってしまえば「無駄」です。
どちらも費用がかかってしまうことに変わりはありません。
無駄をなくせば原価はその分低くなるのだから、企業としては仕損や減損を0にしようとするはずです。
全ての仕損や減損を無駄なものとしてなくそうとするのであれば、通常発生する仕損や減損などはそもそもありえないといえます。

しかし、正常な仕損や減損は現実に存在します。
この「正常」とはどういうことなのでしょうか。

「正常」な仕損や減損

仕損や減損には、大してお金や労力をかけずになくせるものと、なくそうとすると膨大なお金や労力がかかるものがあります。

例えば、料理を作る工場があった場合を考えてみましょう。
材料がマヨネーズだとします。

マヨネーズは残り少なくなると出が悪くなります。
普通に握って出し切ったと思っても、まだ中にはマヨネーズが残っています。
これを捨ててしまえば、残っている分が減損となります。

この減損を減らそうと思えば、マヨネーズの容器をはさみなどで切り、スプーンですくって使います。
これで減損をかなり減らせます。
ここまでは大してお金も労力もかからないので、実際に行っている工場も多いでしょう。

しかし、まだ減損は0ではありません。
ほんのわずかですが、容器の中にマヨネーズが残っているはずです。
この減損をなくすには「専用の器具を買う」「マヨネーズを無駄なくすくいだす熟練工を雇う」などといった対策が必要になるでしょう。

これにはそれなりのお金がかかります。
そのかかったお金に対して得られるものはごくわずかのマヨネーズです。

それならこのマヨネーズを捨ててしまった方がはるかに合理的だということになります。

このように、仕損や減損をなくすためにかかる費用が仕損や減損をなくすことで得られる利益よりも大きい場合は仕損や減損をそのままにしておくことが企業としては適切な決定ということになります。
このような仕損や減損が正常仕損・正常減損となります。

逆に、仕損や減損をなくすことで得られる利益が仕損や減損をなくすためにかかる費用より大きい場合は、その仕損や減損はなくす努力をすでにしているはずです。
よってこのような仕損や減損は理論上は発生しません。
しかし、ミスによる発生や天災による発生はありえます。
この仕損や減損は異常なものとして、異常仕損や異常減損として処理することになります。

これが正常仕損・正常減損と異常仕損・異常減損の違いになります。

正常仕損費・正常減損費の処理

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >正常仕損費・正常減損費の処理

正常仕損費・正常減損費の処理についてお伝えします。

正常仕損費・正常減損費の処理

正常仕損費・正常減損費は、完成品と月末仕掛品に負担させます。
ただし、いつも完成品と月末仕掛品の両方に負担させるわけではありません。
完成品にのみに負担させることもあります。

つまり以下の2つの処理方法があるということになります。

  • 完成品にのみ負担させる場合
  • 完成品と月末仕掛品の両方に負担させる場合

以下詳しくお伝えします。

完成品にのみ負担させる場合

正常仕損・正常減損が月末仕掛品の加工進捗度よりも後の時点で発生した場合には、正常仕損費・正常減損費は月末仕掛品には負担させず、完成品にのみに負担させます


暗記不要の簿記独学講座-完成品のみ負担


「月末仕掛品の加工進捗度<仕損・減損の発生点」…完成品のみ負担

ということになります。

月末仕掛品の進捗度よりも仕損・減損の発生点が後だということは、月末仕掛品の完成度の時点では仕損・減損は発生していないということになります。

具体的に考えてみるとよく分かります。

月末仕掛品の加工進捗度が40%で、仕損・減損の発生点が70%だとしましょう。
月末仕掛品の時点ではまだ仕損・減損は発生していません。
月末仕掛品の加工がさらにあと30%進み、70%まで加工が進んだ時点で仕損・減損が発生するからです。
ということは仕損費・減損費は完成品のみに負担させるのが合理的です。

完成品と月末仕掛品の両方に負担させる場合

正常減損・正常仕損が月末仕掛品の加工進捗度よりも前または同じ時点で発生した場合には、正常仕損費・正常減損費は完成品と月末仕掛品の両方に負担させます

暗記不要の簿記独学講座-完成品と月末仕掛品の両者負担


「仕損・減損の発生点≦月末仕掛品の加工進捗度」…完成品と月末仕掛品の両者負担

ということになります。

仕損・減損の発生点よりも月末仕掛品の進捗度が後だということは、月末仕掛品は仕損・減損が発生したあとの仕掛品だということになります。

具体的に考えてみるとよく分かります。

仕損・減損の発生点が40%で、月末仕掛品の加工進捗度が70%だとしましょう。
月末仕掛品は仕損・減損が発生したあと、さらに30%の加工を行った仕掛品だということになります。
ということは、仕損費・減損費は月末仕掛品にも負担させるのが合理的です。


このように加工進捗度と仕損・減損の発生点との関係で2つの処理方法を使い分けることになります。

度外視法と非度外視法

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >度外視法と非度外視法

度外視法と非度外視法についてお伝えします。

度外視法と非度外視法

正常仕損費・正常減損費の処理 に関する具体的な計算方法として、度外視法と非度外視法があります。

度外視法

正常仕損・正常減損を無視することで自動的に完成品や期末仕掛品に配分してしまう方法が度外視法です
度外視法では完成品のみに負担させる方法と完成品と期末仕掛品の両方に負担させる方法で計算が異なります。

完成品のみに負担させる場合

完成品のみに負担させる場合、仕損費・減損費を一度計算して完成品に足すことで計算を行います

  • 月末仕掛品材料費=(月初仕掛品材料費+当月材料費)÷(完成品数量+月末仕掛品数量+仕損・減損数量)×月末仕掛品数量
  • 月末仕掛品加工費=(月初仕掛品加工費+当月加工費)÷(完成品数量+月末仕掛品数量×加工進捗度+仕損・減損数量×発生点)×月末仕掛品数量×加工進捗度

計算式は上のようになりますが、この計算式は覚えるものではありません(一応書いただけです)。
計算式の意味をきちんと理解しておくことが重要です。

完成品と期末仕掛品の両方に負担させる場合

完成品と期末仕掛品の両方に負担させる場合、仕損費・減損費を完全に無視して計算することで自動的に両方に負担させることになります

  • 月末仕掛品材料費=(月初仕掛品材料費+当月材料費)÷(完成品数量+月末仕掛品数量)×月末仕掛品数量
  • 月末仕掛品加工費=(月初仕掛品加工費+当月加工費)÷(完成品数量+月末仕掛品数量×加工進捗度)×月末仕掛品数量×加工進捗度

計算式は上のようになりますが、この計算式は覚えるものではありません(一応書いただけです)。
計算式の意味をきちんと理解しておくことが重要です。

度外視法では、計算式の分母に「完成品のみに負担させる場合には仕損量・減損量を入れる」「完成品と期末仕掛品の両方に負担させる場合には仕損量・減損量を入れない」という形で2つの方法の違いを区別しています

非度外視法

正常仕損・正常減損を無視せずに、正常仕損費・正常減損費を一度計算してから完成品や期末仕掛品に再度配分する方法が非度外視法です。
簿記1級の範囲なので割愛します。
簿記2級では度外視法のみ理解しておけば大丈夫です。

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度外視法(先入先出法)(完成品のみに負担させる場合)の具体例

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >度外視法(先入先出法)(完成品のみに…

度外視法 (完成品のみに負担させる場合)(先入先出法) の具体例についてお伝えします。

資料

1.生産データ

  

月初仕掛品 500個(40%)
当月投入  2,500個
計     3,000個
正常仕損   400個
月末仕掛品 600個(50%)
完成品   2,000個

  • カッコ内の数字は加工進捗度を示している。
  • 材料は始点投入である。
  • 仕損は全て正常なものである。
  • 月末仕掛品原価は先入先出法により計算する。
  • 仕損は終点で発生する。

2.原価データ


材料費 加工費
月初仕掛品 \500,000 \200,000
当月製造費用 \1,250,000 \1,000,000
\1,750,000 \1,200,000

この資料をもとに完成品原価と月末仕掛品原価を求めてみましょう。

考え方

まずは正常仕損が完成品のみに負担させるのか完成品と期末仕掛品の両方に負担させるのかについて判断しましょう

正常仕損は終点で発生しています。
終点で発生ということは加工進捗度100%、つまり完成と同時に仕損が発生しているということになります。
期末仕掛品はまだ50%しか完成していません。
ということは、期末仕掛品に仕損は全く影響しないということです(期末仕掛品がさらに50%加工を行い、完成すると同時に仕損が発生することになります)。

よって、正常仕損は完成品のみに負担させることになります。
完成品のみに負担させるので、仕損は一応考慮します。
仕損の金額を計算したあとにその金額を完成品原価に加えるということになります。

では、ボックス図を作っていきましょう。
この資料から分かる数字を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図26

次に、月初仕掛品に含まれる加工費と月末仕掛品に含まれる加工費を求めましょう。

  • 月初仕掛品に含まれる加工費(200個)=月初仕掛品数量(500円)×月初仕掛品加工進捗度(40%)
  • 月末仕掛品に含まれる加工費(300個)=月末仕掛品数量(600円)×月末仕掛品加工進捗度(50%)

ちなみに正常仕損に含まれる加工進捗度は終点発生なので100%です
よって、400個となります。

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図27

次に、加工費の当月投入量を求めましょう。
ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 加工費の当月投入量(2,500個)=完成品(2,000個)+正常仕損(400個)+月末仕掛品(300個)-月初仕掛品(200個)

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図28

これで個数に関しては全て求まりました。
あとは金額だけです。
月末仕掛品の金額を求めます。

  • 月末仕掛品材料費(300,000円)=当月投入材料費(1,250,000円)÷当月投入材料数量(2,500個)×月末仕掛品材料費(600個)
  • 月末仕掛品加工費(120,000円)=当月投入加工費(1,000,000円)÷当月投入加工費完成品換算数量(2,500個)×月末仕掛品加工費完成品換算数量(300個)

となります。

次に正常仕損の金額を求めましょう。

  • 正常仕損材料費(200,000円)=当月投入材料費(1,250,000円)÷当月投入材料数量(2,500個)×正常仕損材料数量(400個)
  • 正常仕損加工費(160,000円)=当月投入加工費(1,000,000円)÷当月投入加工費完成品換算数量(2,500個)×正常仕損加工費完成品換算数量(400個)

当月仕掛品は全て完成するとみなし、正常仕損の全ては当月投入分から発生すると考えます(月初仕掛品からの仕損の発生は考えないということです)。
これは理論的には正しいと言えない面もあるのですが、簡便性を優先してこのような処理を行うことになっています。

計算式を覚えるのではなく、何を計算しているのかをきちんと理解することが重要です。

ここまで記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図29

あとは完成品原価のみです。
ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 完成品材料費(1,250,000円)=月初仕掛品材料費(500,000円)+当月投入材料費(1,250,000円)-正常仕損費(200,000円)-月末仕掛品材料費(300,000円)
  • 完成品加工費(920,000円)=月初仕掛品加工費(200,000円)+当月投入加工費(1,000,000円)-正常仕損費(160,000円)-月末仕掛品加工費(120,000円)

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図30

あとは解答だけです。

解答

  • 完成品原価(2,530,000円)=完成品材料費(1,250,000円)+完成品加工費(920,000円)+正常仕損材料費(200,000円)+正常仕損加工費(160,000円)
  • 月末仕掛品原価(420,000円)=月末仕掛品材料費(300,000円)+月末仕掛品加工費(120,000円)

今回は正常仕損費を完成品に加えるという考え方をより表すため、あえて正常仕損費を計算した上で完成品原価に加えました。
しかし、どうせ加えるのであれば、分けて計算せずに下のように考えて純粋な完成品原価と正常仕損費をまとめて計算することもできます。

  • (純粋な完成品原価+正常仕損費)=月初仕掛品原価+当月投入-月末仕掛品原価

この場合、月末仕掛品原価が求まった時点で上の式から(純粋な完成品原価+正常仕損)が計算できます。
正常仕損費をわざわざ計算する必要はありません。
慣れてくるとこのような解き方もやってみるといいと思います。

仕訳

上のボックス図に関する仕訳を示すと下のようになります。

材料費と加工費を仕掛品勘定に振り替える

(借)仕掛品 2,250,000/(貸)材料費 1,250,000
            /(貸)加工費 1,000,000

完成品原価を仕掛品勘定から製品勘定に振り替える

(借)製品 2,5300,000/(貸)仕掛品 2,530,000

月末仕掛品原価である420,000円に関しては特に仕訳は切りません。
そのまま次月に繰り越されます。

また、正常仕損費を考えて、

材料費と加工費を仕掛品勘定に振り替える

(借)仕掛品 2,250,000/(貸)材料費 1,250,000
            /(貸)加工費 1,000,000

仕掛品勘定を正常仕損費に振り替える

(借)正常仕損費 360,000/(貸)仕掛品 360,000

正常仕損費を完成品原価に加える

(借)仕掛品 360,000/(貸)正常仕損費 360,000

完成品原価を仕掛品勘定から製品勘定に振り替える


(借)製品 2,5300,000/(貸)仕掛品 2,530,000

という仕訳も考えられなくもないですが、仕損を無視して考えるという度外視法を採用しているので、仕訳でも無視する方が一貫性があります。
よって、正常仕損費は勘定科目に出てこない上の仕訳の方が適切だといえます。


工業簿記で仕訳の問題はあまり出題されませんが、仕訳は簿記では重要です。
学習するときにはときどき仕訳を確認するといいです。
ボックス図をしっかりと書ければ仕訳は切ることができます。

関連記事

度外視法(先入先出法)(完成品と期末仕掛品の両方に負担させる場合)の具体例

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >度外視法(先入先出法)(完成品と期末仕掛品…

度外視法 (完成品と期末仕掛品の両方に負担させる場合)(先入先出法) の具体例についてお伝えします。

資料

1.生産データ

月初仕掛品 500個(40%)
当月投入  2,500個
計     3,000個
正常仕損   400個
月末仕掛品 600個(50%)
完成品   2,000個

  • カッコ内の数字は加工進捗度を示している。
  • 材料は始点投入である。
  • 仕損は全て正常なものである。
  • 月末仕掛品原価は先入先出法により計算する。
  • 仕損は始点で発生する。

2.原価データ


材料費 加工費
月初仕掛品 \500,000 \200,000
当月製造費用 \1,260,000 \1,050,000
\1,760,000 \1,250,000

この資料をもとに完成品原価と月末仕掛品原価を求めてみましょう。

考え方

まずは正常仕損が完成品のみに負担させるのか完成品と期末仕掛品の両方に負担させるのかについて判断しましょう

正常仕損は始点で発生しています。
始点で発生ということは加工進捗度0%、つまり製造開始と同時に仕損が発生しているということになります。
ということは、期末仕掛品は正常仕損が発生したあとさらに加工をすすめていると考えられます。

よって、正常仕損は完成品と期末仕掛品の両方に負担させることになります。
完成品と期末仕掛品の両方に負担させるので、仕損は無視します。
完全に無視することで自動的に完成品と期末仕掛品の両方に負担させることになります。

では、ボックス図を作っていきましょう。
この資料から分かる数字を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図31


気をつけなければならないのは当月投入の欄です。
資料では当月投入は2,500個となっていますが、ボックス図の当月投入欄に2,500個と書いてしまうとボックス図の左右の個数が合わなくなってしまいます。
右側の正常仕損の欄が無視されるからです。
よって当月投入の欄には左右のボックス図の個数が同じになるように正常仕損の400個を資料の当月投入量2,500個から引いた2,100個を書くことになります。

次に、月初仕掛品に含まれる加工費と月末仕掛品に含まれる加工費を求めましょう。

  • 月初仕掛品に含まれる加工費(200個)=月初仕掛品数量(500円)×月初仕掛品加工進捗度(40%)
  • 月末仕掛品に含まれる加工費(300個)=月末仕掛品数量(600円)×月末仕掛品加工進捗度(50%)

ちなみに正常仕損に含まれる加工進捗度は始点発生なので0%です
よって、0個となります。

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図32

次に、加工費の当月投入量を求めましょう。
ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 加工費の当月投入量(2,100個)=完成品(2,000個)+月末仕掛品(300個)-月初仕掛品(200個)

正常仕損は無視するところが重要です。

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図33

これで個数に関しては全て求まりました。
あとは金額だけです。
月末仕掛品の金額を求めます。

  • 月末仕掛品材料費(360,000円)=当月投入材料費(1,260,000円)÷当月投入材料数量(2,100個)×月末仕掛品材料費(600個)
  • 月末仕掛品加工費(150,000円)=当月投入加工費(1,050,000円)÷当月投入加工費完成品換算数量(2,100個)×月末仕掛品加工費完成品換算数量(300個)

となります。

計算式を覚えるのではなく、何を計算しているのかをきちんと理解することが重要です。

ここまで記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図34

あとは完成品原価のみです。
ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 完成品材料費(1,400,000円)=月初仕掛品材料費(500,000円)+当月投入材料費(1,260,000円)-月末仕掛品材料費(360,000円)
  • 完成品加工費(1,100,000円)=月初仕掛品加工費(200,000円)+当月投入加工費(1,050,000円)-月末仕掛品加工費(150,000円)

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図35

正常仕損費が完全に無視されているという点が重要です。

解答

  • 完成品原価(2,500,000円)=完成品材料費(1,400,000円)+完成品加工費(1,100,000円)
  • 月末仕掛品原価(510,000円)=月末仕掛品材料費(360,000円)+月末仕掛品加工費(150,000円)

正常仕損費が完全に無視されているという点が重要です。

仕訳

上のボックス図に関する仕訳を示すと下のようになります。

材料費と加工費を仕掛品勘定に振り替える

(借)仕掛品 2,310,000/(貸)材料費 1,260,000
            /(貸)加工費 1,050,000

完成品原価を仕掛品勘定から製品勘定に振り替える

(借)製品 2,5000,000/(貸)仕掛品 2,500,000

月末仕掛品原価である510,000円に関しては特に仕訳は切りません。
そのまま次月に繰り越されます。


工業簿記で仕訳の問題はあまり出題されませんが、仕訳は簿記では重要です。
学習するときにはときどき仕訳を確認するといいです。
ボックス図をしっかりと書ければ仕訳は切ることができます。

関連記事

度外視法(平均法)(完成品のみに負担させる場合)の具体例

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >度外視法(平均法)(完成品のみ…

度外視法 (完成品のみに負担させる場合)(平均法) の具体例についてお伝えします。

資料

1.生産データ

月初仕掛品 500個(40%)
当月投入  2,500個
計     3,000個
正常仕損   400個
月末仕掛品 600個(50%)
完成品   2,000個

  • カッコ内の数字は加工進捗度を示している。
  • 材料は始点投入である。
  • 仕損は全て正常なものである。
  • 月末仕掛品原価は平均法により計算する。
  • 仕損は終点で発生する

2.原価データ


材料費 加工費
月初仕掛品 \550,000 \350,000
当月製造費用 \1,250,000 \1,000,000
\1,800,000 \1,350,000

この資料をもとに完成品原価と月末仕掛品原価を求めてみましょう。

考え方

まずは正常仕損が完成品のみに負担させるのか完成品と期末仕掛品の両方に負担させるのかについて判断しましょう

正常仕損は終点で発生しています。
終点で発生ということは加工進捗度100%、つまり完成と同時に仕損が発生しているということになります。
期末仕掛品はまだ50%しか完成していません。
ということは、期末仕掛品に仕損は全く影響しないということです(期末仕掛品がさらに50%加工を行い、完成すると同時に仕損が発生することになります)。

よって、正常仕損は完成品のみに負担させることになります。
完成品のみに負担させるので、仕損は一応考慮します
仕損の金額を計算したあとにその金額を完成品原価に加えるということになります。

では、ボックス図を作っていきましょう。
この資料から分かる数字を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図16

次に、月初仕掛品に含まれる加工費と月末仕掛品に含まれる加工費を求めましょう。

  • 月初仕掛品に含まれる加工費(200個)=月初仕掛品数量(500円)×月初仕掛品加工進捗度(40%)
  • 月末仕掛品に含まれる加工費(300個)=月末仕掛品数量(600円)×月末仕掛品加工進捗度(50%)

ちなみに正常仕損に含まれる加工進捗度は終点発生なので100%です
よって、400個となります。

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図17

次に、加工費の当月投入量を求めましょう。
ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 加工費の当月投入量(2,500個)=完成品(2,000個)+正常仕損(400個)+月末仕掛品(300個)-月初仕掛品(200個)

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図18

これで個数に関しては全て求まりました。
あとは金額だけです。
月末仕掛品の金額を求めます。

  • 月末仕掛品材料費(360,000円)={月初仕掛品材料費(550,000円)+当月投入材料費(1,250,000円)}÷{月初仕掛品材料数量(500個)+当月投入材料数量(2,500個)}×月末仕掛品材料数量(600個)
  • 月末仕掛品加工費(150,000円)={月初仕掛品加工費(350,000円)+当月投入加工費(1,000,000円)}÷{月初仕掛品加工費数量(200個)+当月投入加工費完成品換算数量(2,500個)}×月末仕掛品加工費完成品換算数量(300個)

となります。

次に正常仕損の金額を求めましょう。

  • 正常仕損材料費(240,000円)={月初仕掛品材料費(550,000円)+当月投入材料費(1,250,000円)}÷{月初仕掛品材料数量(500個)+当月投入材料数量(2,500個)}×正常仕損材料数量(400個)
  • 正常仕損加工費(200,000円)={月初仕掛品加工費(350,000円)+当月投入加工費(1,000,000円)}÷{月初仕掛品加工費数量(200個)+当月投入加工費完成品換算数量(2,500個)}×正常仕損加工費完成品換算数量(400個)

計算式を覚えるのではなく、何を計算しているのかをきちんと理解することが重要です。

ここまで記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図19

あとは完成品原価のみです。
ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 完成品材料費(1,200,000円)=月初仕掛品材料費(550,000円)+当月投入材料費(1,250,000円)-正常仕損費(240,000円)-月末仕掛品材料費(360,000円)
  • 完成品加工費(1,000,000円)=月初仕掛品加工費(350,000円)+当月投入加工費(1,000,000円)-正常仕損費(200,000円)-月末仕掛品加工費(150,000円)

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図20

あとは解答だけです。

解答

  • 完成品原価(2,640,000円)=完成品材料費(1,200,000円)+完成品加工費(1,000,000円)+正常仕損材料費(240,000円)+正常仕損加工費(200,000円)
  • 月末仕掛品原価(510,000円)=月末仕掛品材料費(360,000円)+月末仕掛品加工費(150,000円)

今回は正常仕損費を完成品に加えるという考え方をより表すため、あえて正常仕損費を計算した上で完成品原価に加えました。
しかし、どうせ加えるのであれば、分けて計算せずに下のように考えて純粋な完成品原価と正常仕損費をまとめて計算することもできます。

  • (純粋な完成品原価+正常仕損費)=月初仕掛品原価+当月投入-月末仕掛品原価

この場合、月末仕掛品原価が求まった時点で上の式から(純粋な完成品原価+正常仕損)が計算できます。
正常仕損費をわざわざ計算する必要はありません。
慣れてくるとこのような解き方もやってみるといいと思います。

仕訳

上のボックス図に関する仕訳を示すと下のようになります。

材料費と加工費を仕掛品勘定に振り替える

(借)仕掛品 2,250,000/(貸)材料費 1,250,000
            /(貸)加工費 1,000,000

完成品原価を仕掛品勘定から製品勘定に振り替える

(借)製品 2,6400,000/(貸)仕掛品 2,640,000

月末仕掛品原価である510,000円に関しては特に仕訳は切りません。
そのまま次月に繰り越されます。

また、正常仕損費を考えて、

材料費と加工費を仕掛品勘定に振り替える

(借)仕掛品 2,250,000/(貸)材料費 1,250,000
            /(貸)加工費 1,000,000

仕掛品勘定を正常仕損費に振り替える

(借)正常仕損費 440,000/(貸)仕掛品 440,000

正常仕損費を完成品原価に加える

(借)仕掛品 440,000/(貸)正常仕損費 440,000

完成品原価を仕掛品勘定から製品勘定に振り替える

(借)製品 2,6400,000/(貸)仕掛品 2,640,000

という仕訳も考えられなくもないですが、仕損を無視して考えるという度外視法を採用しているので、仕訳でも無視する方が一貫性があります。
よって、正常仕損費は勘定科目に出てこない上の仕訳の方が適切だといえます。


工業簿記で仕訳の問題はあまり出題されませんが、仕訳は簿記では重要です。
学習するときにはときどき仕訳を確認するといいです。
ボックス図をしっかりと書ければ仕訳は切ることができます。

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度外視法(平均法)(完成品と期末仕掛品の両方に負担させる場合)の具体例

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >度外視法(平均法)(完成品と期末仕掛品…

度外視法 (完成品と期末仕掛品の両方に負担させる場合)(平均法) の具体例についてお伝えします。

資料

1.生産データ

月初仕掛品 500個(40%)
当月投入  2,900個
計     3,400個
正常仕損   400個
月末仕掛品 600個(50%)
完成品   2,400個

  • カッコ内の数字は加工進捗度を示している。
  • 材料は始点投入である。
  • 仕損は全て正常なものである。
  • 月末仕掛品原価は平均法により計算する。
  • 仕損は始点で発生する

2.原価データ


材料費 加工費
月初仕掛品 \550,000 \350,000
当月製造費用 \1,250,000 \1,000,000
\1,800,000 \1,350,000

この資料をもとに完成品原価と月末仕掛品原価を求めてみましょう。

考え方

まずは正常仕損が完成品のみに負担させるのか完成品と期末仕掛品の両方に負担させるのかについて判断しましょう

正常仕損は始点で発生しています。
始点で発生ということは加工進捗度0%、つまり製造開始と同時に仕損が発生しているということになります。
ということは、期末仕掛品は正常仕損が発生したあとさらに加工をすすめていると考えられます。

よって、正常仕損は完成品と期末仕掛品の両方に負担させることになります。
完成品と期末仕掛品の両方に負担させるので、仕損は無視します
完全に無視することで自動的に完成品と期末仕掛品の両方に負担させることになります。

では、ボックス図を作っていきましょう。
この資料から分かる数字を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図21

気をつけなければならないのは当月投入の欄です。
資料では当月投入は2,900個となっていますが、ボックス図の当月投入欄に2,900個と書いてしまうとボックス図の左右の個数が合わなくなってしまいます。
右側の正常仕損の欄が無視されるからです。
よって当月投入の欄には左右のボックス図の個数が同じになるように正常仕損の400個を資料の当月投入量2,900個から引いた2,500個を書くことになります。

次に、月初仕掛品に含まれる加工費と月末仕掛品に含まれる加工費を求めましょう。

  • 月初仕掛品に含まれる加工費(200個)=月初仕掛品数量(500円)×月初仕掛品加工進捗度(40%)
  • 月末仕掛品に含まれる加工費(300個)=月末仕掛品数量(600円)×月末仕掛品加工進捗度(50%)

ちなみに正常仕損に含まれる加工進捗度は始点発生なので0%です
よって、0個となります。

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図22

次に、加工費の当月投入量を求めましょう。
ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 加工費の当月投入量(2,500個)=完成品(2,400個)+月末仕掛品(300個)-月初仕掛品(200個)

正常仕損は無視するところが重要です。

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図23

これで個数に関しては全て求まりました。
あとは金額だけです。
月末仕掛品の金額を求めます。

  • 月末仕掛品材料費(360,000円)={月初仕掛品材料費(550,000円)+当月投入材料費(1,250,000円)}÷{月初仕掛品材料数量(500個)+当月投入材料数量(2,500個)}×月末仕掛品材料数量(600個)
  • 月末仕掛品加工費(150,000円)={月初仕掛品加工費(350,000円)+当月投入加工費(1,000,000円)}÷{月初仕掛品加工費数量(200個)+当月投入加工費完成品換算数量(2,500個)}×月末仕掛品加工費完成品換算数量(300個)

となります。

計算式を覚えるのではなく、何を計算しているのかをきちんと理解することが重要です。

ここまで記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図24

あとは完成品原価のみです。
ボックスの左側の数字と右側の数字が同じになることに注目して求めます。

  • 完成品材料費(1,440,000円)=月初仕掛品材料費(550,000円)+当月投入材料費(1,250,000円)-月末仕掛品材料費(360,000円)
  • 完成品加工費(1,200,000円)=月初仕掛品加工費(350,000円)+当月投入加工費(1,000,000円)-月末仕掛品加工費(150,000円)

これらの数値を記入したボックス図は下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-ボックス図25

正常仕損費が完全に無視されている
という点が重要です。

解答

  • 完成品原価(2,640,000円)=完成品材料費(1,440,000円)+完成品加工費(1,200,000円)
  • 月末仕掛品原価(510,000円)=月末仕掛品材料費(360,000円)+月末仕掛品加工費(150,000円)

正常仕損費が完全に無視されているという点が重要です。

仕訳

上のボックス図に関する仕訳を示すと下のようになります。

材料費と加工費を仕掛品勘定に振り替える

(借)仕掛品 2,250,000/(貸)材料費 1,250,000
            /(貸)加工費 1,000,000

完成品原価を仕掛品勘定から製品勘定に振り替える

(借)製品 2,6400,000/(貸)仕掛品 2,640,000

月末仕掛品原価である510,000円に関しては特に仕訳は切りません。
そのまま次月に繰り越されます。


工業簿記で仕訳の問題はあまり出題されませんが、仕訳は簿記では重要です。
学習するときにはときどき仕訳を確認するといいです。
ボックス図をしっかりと書ければ仕訳は切ることができます。

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副産物

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >副産物

副産物についてお伝えします。

副産物

その企業が製造することを目的としている製品(主産物)を製造するときに一緒にできるものを副産物といいます
豆腐を製造するときにできる「おから」や原油を精製してガソリンや軽油を取り出すときに同時にできる「重油」などが副産物の代表例です。

副産物は売却価値や材料としての利用価値があります
この売却価値や利用価値のことを「副産物の評価額」といいます

副産物には評価額があるので、副産物が発生する場合は完成品総合原価から副産物の評価額を差し引いて製品の製造原価を計算することになります。

副産物の勘定連絡図でのイメージ

副産物の勘定連絡図でのイメージは下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-勘定連絡図16

完成品総合原価の中に副産物が含まれているので、完成品総合原価から副産物の評価額を差し引くことになります。

副産物と作業くずの違い

副産物によく似たものとして作業くず があります。
製品を作る途中に発生するくずのうち価値があるくずを作業くずといいました。

副産物と作業くずの違いは「材料と同質のものであるか」にあります。
材料と同質のものであれば作業くず、異質のものであれば副産物です。

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副産物の仕訳の具体例

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >副産物の仕訳の具体例

副産物 の仕訳の具体例についてお伝えします。

副産物が発生した

「副産物が発生した。この副産物の利用価値は100,000円である。」という場合の仕訳について考えてみましょう。

副産物は完成品総合原価から差し引きます。
よって『(貸)仕掛品100,000』となります。

この差し引かれた副産物の利用価値は副産物勘定に振り替えられます。
よって『(借)副産物100,000』となります。

まとめると、

(借)副産物 100,000/(貸)仕掛品 100,000

となります。

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標準原価計算(概論)

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >標準原価計算(概論)

標準原価計算についてお伝えします。

標準原価計算

標準原価計算ではあらかじめ原価の標準を設定しておきます。
原価の標準とは、製品1単位あたりの標準原価で、いくらで製品が製造されるべきかを表すものです。

原価の標準に実際の生産量をかけることで実績標準原価を計算し、この実績標準原価と実際原価を比較することで差異を分析します
これが標準原価計算です。

標準原価計算は、原価管理に役立つ情報を提供するために使われます。

標準原価と実際原価の違い

個別原価計算総合原価計算 は実際原価を使います。
実際原価とは「製品がいったいいくらで製造されたのか」を表す価格です。

それに対して標準原価計算では標準原価が使われます。
標準原価とは「あらかじめ製造する前に、このくらいで製品が製造できるという目標を設定し、それに実際の生産量をかけた」価格です。

標準原価計算と実際原価計算の違い

原価計算で材料消費高、消費賃金を計算する場合には、実際の数字を使うか予定の数字を使うかでいくつかの組み合わせが考えられます。
その組み合わせと原価計算の種類を整理すると下の表のようになります。

  • 材料消費高=消費数量×消費単価
消費数量/消費単価 実際価格 予定価格
実際数量 実際原価計算(原価法) 実際原価計算(予定価格法)
予定数量 なし 標準原価計算
  • 消費賃金=消費賃率×就業時間
就業時間/消費賃率 実際消費賃率 予定消費賃率
実際時間 実際原価計算(原価法) 実際原価計算(予定価格法)
予定時間 なし 標準原価計算

つまり、材料消費高を計算するのに予定数量を使う場合、消費賃金を計算するのに予定就業時間を使う場合は標準原価計算ということになります。

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標準原価計算の必要性

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >標準原価計算の必要性

標準原価計算 の必要性についてお伝えします。

標準原価計算の必要性

標準原価計算が必要だということは実際原価計算に欠点があるということです。

実際原価計算(原価法)には以下のような欠点があります。

  • 材料の価格変動・工員の賃率の変動という偶然的な要因が原価に含まれてしまう
  • 操業度の変動という管理不能な要因が原価に含まれてしまう
  • 材料の無駄遣いや工員・機械の能率低下が原価に含まれてしまう
  • 計算が遅い

これらの欠点をもう一度確認しておきましょう。

材料の価格変動・工員の賃率の変動という偶然的な要因が原価に含まれてしまう

材料の価格は変動します。
季節や状況によって同じものが高くなったり安くなったりします。

また、工員の賃率も変動します。
同じ作業でも賃率の高い工員が作業するのか安い工員が作業するのかで消費賃金が高くなったり安くなったりします。
残業時に作業した場合、残業は時給が上がるため、消費賃金が高くなります。

このような原因で原価は変動します。
しかし、これらは偶然的なもので、管理できるものではありません。
また、管理する必要もありません。
このような原価の変動は原価管理には役に立たないのです。

しかし実際原価計算(原価法)では、このような要素も原価に含まれてしまいます。
このような原価の変動が原価に含まれてしまうと、原価管理ができなくなってしまいます。

操業度の変動という管理不能な要因が原価に含まれてしまう

操業度とは工場がどれだけ稼動しているかを表すものです。
これは季節による変動や景気による変動が考えられます。
ビール工場であれば夏は操業度が高く、冬は操業度が低いでしょう。

このような操業度の変動で原価も変動します。
しかし、このような操業度の変動は全く管理できませんし、する必要もありません。
操業度が高い方がいいのは間違いないので操業度を高く保ちたいのはヤマヤマですが、それは営業部の仕事です。
工場で管理できることではありません(営業と製作が協力することで売り上げを上げていくことは経営上重要なことなのですが、これは間接的なことなのでここでは触れません)。

しかし実際原価計算(原価法)では、このような要素も原価に含まれてしまいます。
このような原価の変動が原価に含まれてしまうと、原価管理ができなくなってしまいます。

材料の無駄遣いや工員の能率低下が原価に含まれてしまう

材料を無駄に使えば、その分原価は大きくなります。
工員の能率が低下してしまえば、その分原価は大きくなります。

これらの原価は管理すべきものです。
材料の無駄を減らし、工員の能率低下を抑えればその分原価を小さくすることができるからです。

しかし、実際原価計算(原価法)では、このような要素も原価に含まれてしまいます。
原価に混ざってしまうと、どれくらい材料の無駄が発生しているのか、どのくらい工員の能率低下が起こっているのかが分かりません。
これでは管理できません。

計算が遅い


実際原価計算(原価法)では全ての実際原価を計算するまで時間がかかるので計算が遅くなります。
計算が遅いということはそれだけ原価管理の具体的な対応を取り始めるのも遅くなるということになります。

計算は速ければ速いほど迅速な対応ができるので、計算は速いに越したことはありません。


これらの実際原価計算の欠点を補うために使われるのが予定価格法 による実際原価計算です。
予定価格を使った原価計算では上の3つの欠点のうちいくつかは解決されます。
  • 材料の価格変動・工員の賃率の変動という偶然的な要因は予定価格を使うことで影響を受けなくなる
  • 操業度の変動という管理不能な要因は原価と分けて考えることができる
  • 計算が速くなる

材料の価格変動・工員の賃率の変動という偶然的な要因は予定価格を使うことで影響を受けなくなる

材料の予定価格を設定しておくことで材料の価格が変動してもその変動は材料消費価格差異として分離して把握できるので原価から分けて考えることができます。

また、工員の予定消費賃率を設定しておくことで実際消費賃率が変動してもその変動は賃率差異として分離して把握できるので原価から分けて考えることができます。

操業度の変動という管理不能な要因は原価と分けて考えることができる

操業度の変動という管理不能な要因は操業度差異として分離して把握できるので原価から分けて考えることができます。

計算が速くなる

予定価格は前もって設定しておきます。
この前もって設定した予定価格を使うことで、迅速に計算をすることができます(実際価格は原価計算期間が終わらなければ求まりません)。


しかし、一つの欠点が残ります。
それは「材料の無駄遣いや工員・機械の能率低下が原価に含まれてしまう」です。

「材料の無駄遣いや工員・機械の能率低下が原価に含まれてしまう」とは…

材料消費高を予定価格法で計算する方法では、下の式で材料消費高を計算します。

材料消費高=実際消費量×予定価格

価格が予定価格となっていることで、実際の価格が偶然的に変動してもその変動は材料消費高には影響を与えません(実際価格の偶発的な変動による影響は材料消費価格差異勘定に集計されます)。

しかし、消費量は実際の数値です。
ということは材料を非効率に使ってしまって材料消費高が大きくなってしまった場合、その非効率な分は材料消費高に含まれてしまいます。

予定消費賃率を使って消費賃金を計算する場合も同様です。
消費賃金を予定消費賃率で計算する方法では、下の式で消費賃金を計算します。

消費賃金=予定消費賃率×就業時間

消費賃率が予定価格となっていることで、実際の消費賃率が偶然的に変動してもその変動は消費賃金には影響を与えません(実際消費賃率の偶発的な変動による影響は賃率差異勘定に集計されます)。

しかし、就業時間は実際の数値です。
ということは工員の能率が低下して消費賃金が大きくなってしまった場合、その非効率な分は消費賃金に含まれてしまいます。

製造間接費の予定配賦の場合はより明確です。
製造間接費の予定配賦における操業度差異は下の式で求まります。

操業度差異=(実際操業度-基準操業度)×固定比率

この式を使って操業度差異を考えてみましょう。

例えば、基準操業度が1,000時間、固定比率が500円/時だとしましょう。
そして、製品の需要が300個あるとします。

この製品を効率的に1個作るのに3時間かかるとします。
すると、効率的に製品を作れば900時間の実際操業度となります。
この場合、操業度差異は下のようになります。

操業度差異=(900時間-1,000時間)×500円/時=50,000円(不利差異)

では、ここで別の状況を考えてみましょう。
非効率的な生産設備の使い方をしてしまって、同じ300個の製品を作るのに1,000時間の実際操業度となってしまったとしましょう。
この場合、操業度差異は下のようになります。

操業度差異=(1,000時間-1,000時間)×500円/時=0円(差異なし)

この結果はまずいです。
本来、工場では管理できない差異と考えていた操業度差異が生産設備の使用効率によって影響を受けています。
生産設備の使用効率は真っ先に管理されなければいけないものです。

その上、非効率な生産設備の使い方をすることで不利差異がなくなってしまっています。
これではまともな原価管理ができません。

このようになってしまう原因は「製品の需要の変化による操業度の変化(管理不能)と生産設備の使用効率による操業度の変化(管理可能)とが同じ操業度差異としてまとめられている」という点にあります。

この欠点を補うためには…

  • 材料を非効率に使ってしまった分が材料消費高に含まれてしまう
  • 工員の能率が低下した分が消費賃金に含まれてしまう
  • 生産設備の使用効率による操業度の変化が操業度差異に含まれてしまう

これらの欠点を補うためには「材料消費量・工員の能率・生産設備の使用効率」に1個あたりの製品を作るにに必要な消費量を予定して、その適切な消費量から外れた分は差異として認識する必要があります。
これが標準原価計算です。

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標準原価計算の目的

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >標準原価計算の目的

標準原価計算 の目的についてお伝えします。

標準原価計算の目的

標準原価計算には3つの目的があります。

  • 原価管理目的
  • 財務諸表作成目的
  • 計算や記帳の簡略化と迅速化

以下詳しく説明します。

原価管理目的

標準原価計算では、製品をいくらで製造するべきかという原価の達成目標である標準原価を設定します。
そして、その標準原価と実際原価を比較することで材料の無駄や工員・生産設備の非効率を発見・改善することで原価を管理します。

財務諸表作成目的

財務諸表を作成するためには製品原価を正確に計算することが必要です。
財務諸表は実際原価計算だけでも作成できますが、その場合、製造過程にどれだけ無駄や非効率があったのかが財務諸表から読み取れません。

しかし、標準原価計算を採用することで、財務諸表からも製造過程における無駄や非効率も分かるようになります。
無駄や非効率が分かることで、より有益な財務諸表を作成することができます。

計算や記帳の簡略化と迅速化

標準原価を使うと、実際原価の計算結果を待たずに完成品原価を計算できます。
よって、計算や記帳をより簡単に、より早く行うことができます。

計算や記帳の簡略化と迅速化は予定価格を使った実際原価計算でもある程度達成できます。
しかし、標準原価計算では完成品の数量だけで完成品原価を計算できるため、より計算や記帳の簡略化と迅速化が達成できることになります(予定価格による実際原価計算では実際消費数量が分からなければ計算できません)。


これらが標準原価計算を採用する目的です。

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標準原価計算の流れ

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >標準原価計算の流れ

標準原価計算 の流れについてお伝えします。

標準原価計算の流れ

標準原価計算は以下の流れで行います。

  1. 原価標準の設定
  2. 標準原価の計算
  3. 実際原価の計算
  4. 標準原価と実際原価との比較による原価差異の計算
  5. 原価差異の原因分析

以下詳しく説明します。

1.原価標準の設定

  • 製品を1個作るのに必要な直接材料費
  • 製品を1個作るのに必要な直接労務費
  • 製品を1個作るのに必要な製造間接費

上のようなものを原価標準といいますが、これらを設定します。
「製品を1個作るのに必要な直接経費」については通常は設定しません。

2.標準原価の計算

原価計算期間の生産実績(当月投入分)に1の原価標準を適用して標準原価を計算します。

3.実際原価の計算

実際原価を集計します。
これは実際原価計算(原価法)と同じです。

4.標準原価と実際原価との比較による原価差異の計算

原価差異が勘定連絡図のどのような形で発生するのかについては2つのパターンがあります。
詳しくは後日お伝えします。

ここでは「標準原価と実際原価の差額を原価差異として計算する」と理解しておいてください。

5.原価差異の原因分析

原価差異を原因別に分類して分析します。
ここについてもいくつかの方法があるので、詳しくは後日お伝えします。
ここでは「原価差異を分析する」とだけ理解しておいてください。


標準原価計算の問題のほとんどは「4.標準原価と実際原価との比較による原価差異の計算」と「5.原価差異の原因分析」です。
これから先はこの2つを中心に学習していきます。

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標準原価差異の分析

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >標準原価差異の分析

標準原価差異の分析についてお伝えします。

標準原価差異の分析

標準原価計算 では標準原価と実際原価を比較して原価差異を計算します。
原価差異は、直接材料費、直接労務費、製造間接費ごとに計算・分析します

直接材料費差異は価格差異と数量差異に分類し、計算・分析します。
直接労務費差異は賃率差異と作業時間差異に分類し、計算・分析します。
製造間接費差異は予算差異・変動費能率差異・固定費能率差異・不働能率差異の4つに分類し、計算・分析します。

製造間接費差異は他にも分類の方法がありますが、この4つに分類する方法(4分法といいます)ができるようになれば他の方法でも問題なくできるようになります。

では、次回以降、直接材料費差異から一つずつお伝えしていきます。

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直接材料費差異

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簿記(TOP) >工業簿記2級 >直接材料費差異

直接材料費差異についてお伝えします。

直接材料費差異

直接材料費差異は、標準原価による直接材料費と実際に発生した直接材料費との差額です。
直接材料費差異を求める計算式は下のようになります。

直接材料費差異=(標準消費価格×標準消費数量)-(実際消費価格×実際消費数量)

直接材料費差異は材料の種類ごとに価格差異と数量差異に分析します

価格差異

価格差異は直接材料の標準消費価格と実際消費価格との差に実際消費数量をかけて計算します。
価格差異を求める計算式は下のようになります。

価格差異=(標準消費価格-実際消費価格)×実際消費数量

数量差異

数量差異は直接材料の標準消費数量と実際消費数量との差に、標準消費価格をかけて計算します。
数量差異を求める計算式は下のようになります。

数量差異=(標準消費数量-実際消費数量)×標準消費価格

これらの計算式は覚える必要はありません。
次にお伝えする面積図を使って計算します。

面積図による直接材料費差異の考え方

面積図で直接材料費差異を分析すると下のようになります。

暗記不要の簿記独学講座-直接材料費差異

縦軸が価格、横軸が数量です。
実際の数値がどうであっても、必ず内側に「標準」を書くことが大切です。

また、この長方形全体の面積が実際に発生した直接材料費を表していることを確認しておいてください。
この面積図をきちんと使えれば公式を覚えなくても直接材料費差異分析はできます。
公式を覚えず、面積図の使い方を身につけてください

不利差異と有利差異の判断

  • 不利差異=借方差異=借方に発生するから「費用」
  • 有利差異=貸方差異=貸方に発生するから「収益」

まずは上の考え方を身につけてください。
次にこの考え方に下の考え方を積み重ねてください。

  • 実際>標準=予定よりも多くの費用がかかっている=不利差異
  • 実際<標準=予定よりも少ない費用ですんでいる=有利差異

このように考えれば、暗記しなくても不利差異と有利差異の判断ができます。

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